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CERT IN-2001-14

  • この文書はCERT Incident Note文書の和訳である。和訳については一切の 保証はしない。この文書を使った結果のあらゆる損害等について 訳者は一切責を負わない。また、転載は禁じる。
  • この和訳は文書の性質上、in rushであり、訳の自然さより も訳出の迅速さを目指している。内容の正確さについては訳者としての 良心から可能な限り気をつけているが、通常の翻訳であれば訳の改善を 図るために訳語等で悩む時間を極力圧縮しているため、不自然なところが 残っているかもしれない。指摘は歓迎である。なお、読者対象は文書の 性質上、ネットワーク管理者等であるため、この読者層に通じやすい 訳語選定を心がけている。
  • この和訳はあくまでも訳者の個人的な関心に基づいて行われている。 今後、飽きるまでは原則として24時間以内の翻訳を目指す(この迅速さが どこまでできるかが訳者の関心である)が、予告なく遅延、終了すること がある。
  • 本文書の和訳について、CERTから翻訳許諾は受けていない。が、こちら の申請に対して拒絶の返事も受けていない。CERT文書は周知のために再配布 するといった行為を許可している。これが翻訳にもそのまま翻訳にも適用 されるとは考えられない(翻訳は内容の変更を伴うため)が、その本来の精神 には合致するものと考え、この翻訳に対して、しかるべきところから明示的に翻訳拒絶の連絡を 受けた場合を除き、本翻訳は訳者の責任において公開する。ただし、内容 についての責任は最初に書いたように負わない。
  • 訳者は大阪女子大学情報センター講師の橋本喜代太(hash@reasoning.org, hash@center.osaka-wu.ac.jp) である。ただし、本文書の訳出に当たって、大学当局は何ら関係ない。
  • 関連文書は ここにリストがある。

CERT® Incident Note IN-2001-14

CERT Coordination Centerはインターネットコミュニティに対して インシデントに関する情報を提供するためインシデントメモ(incident note) を発行する。

W32/BadTrans ワーム

公開日: November 27, 2001

影響を受けるシステム

  • Microsoft Windows 95, 98, ME, NT, and 2000を使っているシステム

概要

W32/BadTransは電子メール添付のファイルとして配布される悪意ある Windowsプログラムである。Internet Explorerの既知の脆弱性のため、 Outlook ExpressやOutlookのような一部の電子メールプログラムでは 電子メールメッセージを閲覧しただけでこの悪意あるプログラムが 実行されることがある。

説明

W32/BadTransワームはシステムを攻略し自己伝播するのに既知の脆弱性 2つを利用しようとする。

W32/BadTransを含む電子メールのMIMEヘッダフォーマットは、特定の MIMEタイプによって任意のコードが実行できてしまうInternet Explorer の脆弱性に付け入ろうとする([訳者追補]この部分は原文通りだが、 もちろんヘッダ自体が何かを行なおうとしているというわけではない。 この部分を言い換えれば「W32/BadTransを含む電子メールのMIMEヘッダ にはInternet Explorerがヘッダ情報の解釈時に特定のMIMEタイプがある と判断すると自動的に任意のコード を実行してしまう脆弱性を突くような内容になっている」ということである) 修正パッチの情報も含め、詳しくは次の文書を参考にされたい。

CERT Vulnerability Note VU#980499
http://www.kb.cert.org/vuls/id/980499

この脆弱性に対する修正パッチを適用したシステムであれば、 この添付ファイルを実行するかどうか尋ねる確認メッセージ がユーザに表示される。ただし、こうしたシステム上でも この添付ファイルを実行すれば攻略されることになる。 ユーザは添付ファイル中に悪意あるコードが入っていないこと が確認できるに足る注意を払うのでない限り、電子メールに 添付されたファイルを実行すべきではない。

W32/BadTransに感染した電子メールに添付されるファイルの名前はメッセージ によって異なるが、ファイル拡張子が2つある点は共通している。標準設定では Windowsは以下でも記載している通り、本来のファイル拡張子([訳注]ファイル名 の一番末尾に付く拡張子のこと)を表示しない。

CERT Incident Note IN-2000-07
http://www.cert.org/incident_notes/IN-2000-07.html

この悪意あるプログラムが実行されると、このコピーがWindowsディレクトリ に"Kernel32.exe"として書き込まれる。

  C:\WINDOWS\Kernel32.exe
    MD5 checksum = 0bf5eaeed25da53f85086767bcd86e5e
    Filesize     = 29020 bytes

Kernel32.exeが実行され、最初に実行された添付フィルはシステムから 削除される。Kernel32.exeはWindowsのバージョンによってはシステム サービスの一つとして実行されることがあり、このため、Microsoftが 提供するデフォルトのシステムタスク一覧には表示されないことがある。

Kernel32.exeはc:\windows\systemディレクトリにさらに2つのファイルを 書き込む。

  C:\WINDOWS\SYSTEM\kdll.dll
    MD5 checksum = c7ceb9fb63edc7fb7c7767f899ff5491
    Filesize     = 5632 bytes

  C:\WINDOWS\SYSTEM\cp_25389.nls
    MD5 checksum = varies
    Filesize     = varies

報告によれば、"kdll.dll"ファイルには、感染したコンピュータ上での ユーザのキーストロークを記録するルーチンがある。"cp_25389.nls"ファイル には、記録されたキーストロークが暗号化された形で保管される。報告 によっては、このログファイルの内容は電子メールで特定のアドレスに 送信され、結果として秘匿すべき情報が漏洩してしまう可能性がある。

kernel32.exeはコンピュータが再起動された際、再起動されたことを 確認するレジストリキーをセットする。

  HKLM\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\RunOnce\Kernel32  = "kernel32.exe"

kernel32.exeは実行中にこのレジストリ値がセットされているかを確認する ため、約10秒ごとにこのレジストリ値をチェックする。

報告によれば、W32/BadTransは自身のコピーを電子メールで送信する。 その宛先は、返信しなかった電子メールのアドレスや、コンピュータ システム上で見つかったファイル中に書かれたアドレスである。W32/BadTrans が作成、送信する電子メールメッセージには次のような特徴がある。

  • SMTPセッション中に、W32/BadTransホストは"HELO AOL.COM"文を 発行する。一般的には、これはメッセージ中に記載されるReceived:ヘッダ を見れば分かる。
  • From:ヘッダ内のアドレスには送り手の電子メールアドレスの前に '_'が付けられている。
  • MIMEヘッダには次のような文字列がある。
      Mime-Version: 1.0
      Content-Type: multipart/related;
          type="multipart/alternative";
          boundary="====_ABC1234567890DEF_===="
    
  • MIMEメッセージの本体は次のようなものが含まれている。
      --====_ABC1234567890DEF_====
      Content-Type: multipart/alternative;
               boundary="====_ABC0987654321DEF_===="
    
      --====_ABC0987654321DEF_====
      Content-Type: text/html;
               charset="iso-8859-1"
      Content-Transfer-Encoding: quoted-printable
    
    
      <HTML><HEAD></HEAD><BODY bgColor=3D#ffffff>
      <iframe src=3Dcid:EA4DMGBP9p height=3D0 width=3D0>
      </iframe></BODY></HTML>
      --====_ABC0987654321DEF_====--
    
      --====_ABC1234567890DEF_====
      Content-Type: audio/x-wav;
               name="filename.ext.ext"
      Content-Transfer-Encoding: base64
      Content-ID: 
    

公開フォーラムでの報告では、W32/BadTransはバックドアを仕掛ける という報告もあるが、CERT/CCでの分析ではこうした報告を裏付ける ことはできていない。

影響

このワームは、ワーム自体を起動してしまったユーザに付与された権限と 同じ権限レベルで任意のコードを実行できる。

このワームが伝播する際、経由点となるホストや電子メールシステムが サービス妨害(DoS)状態に陥るサイトもありえる。

解決策

ベンダが提供する適切な修正パッチを適用せよ

脆弱なInternet Explorer(IE)を動作させている場合は、少なくとも バージョン5.0以降へアップグレードすることを推奨する。というのは それより古いバージョンはもはやMicrosoftが正式にはメンテナンスして いないからである。IE 5.0またはそれ以降のバージョンの場合は、 "埋め込まれたMIMEタイプの自動実行"に関する脆弱性に対処するための Microsoftが発行した修正パッチを適用することを推奨する。これは 以下で入手できる。

http://www.microsoft.com/technet/security/bulletin/MS01-020.asp

[訳者追補]この修正パッチは 日本語版も既に公開されている。日本語版は MS01-020(日本語版)である。

注: IE 5.5 SP1のユーザはMS01-027 で紹介されている修正パッチを適用すべきである。[訳者追補]この修正パッチは 日本語版も既に公開されている。日本語版は MS01-027(日本語版)である。

[訳者追補]MS01-027はIE 5.0, 5.5のセキュリティロールアップにも収録されて いる。しかしながら、こうした個別の問題のみに対処するよりもIE 5.0, IE 5.5の いずれの場合も既にSP2が公開されているので、Windows Updateを利用してこちらに アップグレードすることを強く推奨する。一方、IE 6.0については少なくとも訳者 がこれまで得た情報の範囲では5.0, 5.5からの移行がすべての環境で正しくできる との確信を得られていないため、訳者の個人的見解としてはSP1またはそれ以前 のIE 5.0, 5.5から直接、IE 6.0へアップグレードすることは推奨しない。

ウィルス対策製品を使い、最新状態に保て

すべてのユーザがウィルス対策用ソフトウェアをインストールし、常にシステムを監視させるべきである。そして(訳注:この斜字体の部分は訳者が追補した)、ウィルス対策用ソフトウェアを最新状態に更新するのが重要である。たいていのウィルス対策製品のベンダはこの悪意あるコードを検知し、部分的に復旧を図る手助けとなるような情報、ツール、ウィルス定義ファイルの最新版を既に公開している。各ベンダのウィルス対策製品情報についてはAppendix Aを掲載している。

ウィルス対策用ソフトウェアにはたいていウィルス定義ファイルの自動更新機能がある。利用できる場合は、この自動更新機能を利用することを我々は推奨する。

[訳者追補] ただし、自動更新機能は必ずしも万能ではない。エンジンやウィルス定義ファイルを更新した際にシステムの再起動を求める製品が多いが、システムを24時間稼動させるような使い方をしている場合、(1) 再起動するまで更新されたものは有効になっていないことがあったり、(2) 再起動するまで次の更新は行なわれないことがあったりする。これは同一の製品においても環境によって異なる場合があるようだが、訳者としては、製品が要求するかどうかを問わず、ウィルス対策製品に関する更新を行なった場合、システムを再起動することを推奨する。

電子メールの添付ファイルを開かない

W32/BadTransワームは"file.ext1.ext2"といったファイル名で 電子メールに添付されて届くことがある。ユーザはこの種のファイル名 の添付ファイルを開くべきではない。この種の添付ファイルを どうしても開かなければいけない場合、実行する前に悪意あるコードを スキャンさせるようなやり方で扱う慎重さを発揮することをCERT/CCは 推奨する。

報告求む

CERT/CCはこの活動に関する報告を募集する。自分の管理下にあるマシン が攻略された場合、タイトル行に[CERT#23969]を含めたメールをcert@cert.org に送られたし。

[訳注]当然のことだが、このタイトルのメールを含め、この文書の訳出 上の問題/疑問点以外の情報を訳者に送られても何も対処はできないので、単なる FYIとして以外でこのワームについての情報を訳者に送るべきでない。

Appendix A. ベンダ情報

ウィルス対策ベンダ情報

Aladdin Knowledge Systems

http://www.ealaddin.com/home/csrt/valerts2.asp?virus_no=10093&cf=tl

Command Software Systems

http://www.commandcom.com/virus/badtrans.html

Computer Associates

http://www3.ca.com/Virus/Virus.asp?ID=10579

F-Secure Corp

rolandhttp://www.fsecure.com/v-descs/badtrs_b.shtml

McAfee

http://vil.mcafee.com/dispVirus.asp?virus_k=99069&

Norman Data Defense Systems

http://www.norman.com/virus_info/w32_badtrans_29090_mm.shtml

Panda Software

http://service.pandasoftware.es/servlet/panda.pandaInternet.EntradaDatosInternet? operacion=EV2FichaVirus&pestanaFicha=0&idioma=2&nombreVirusFicha=W32/Badtrans.B

P Software

http://www.pspl.com/virus_info/worms/badtransb.htm

Sophos

http://www.sophos.com/virusinfo/analyses/w32badtransb.html

Symantec

http://www.symantec.com/avcenter/venc/data/w32.badtrans.b@mm.html

Trend Micro

http://www.antivirus.com/vinfo/virusencyclo/default5.asp?VName=WORM_BADTRANS.B

上記の各ベンダに加えて、CERT/CCのコンピュータウィルス情報ページもある。

http://www.cert.org/other_sources/viruses.html


著者: Kevin Houle, Chad Dougherty

この文書は以下で入手できる。
http://www.cert.org/incident_notes/IN-2001-14.html

CERT/CCへの連絡は

電子メール: cert@cert.org
電話: +1 412-268-7090 (24-hour hotline)
Fax: +1 412-268-6989
郵便送付先:
CERT Coordination Center
Software Engineering Institute
Carnegie Mellon University
Pittsburgh PA 15213-3890
U.S.A.
CERT/CCの職員は月曜〜金曜の personnel answer the hotline 08:00-17:00 EST(GMT-5) / EDT(GMT-4)であればホットラインを受け付けている。他の時間、合衆国の祝日、週末も緊急時の ため待機している。

暗号を利用する

セキュリティ上微妙な情報を電子メールで我々に送る場合は暗号化することを 強く推奨する。我々の公開PGP鍵は以下で入手できる。

DESを利用したい場合は、CERTホットラインに電話して欲しい。

セキュリティ情報を得る

CERTの出版物ならびにその他のセキュリティ情報はCERTのウェブサイトで見ることができる。

CERTの勧告、速報を配布するメーリングリストを購読したい場合は、 majordomo@cert.org に本文が次のようなメールを送ること。

* "CERT" 並びに "CERT Coordination Center" はU.S. Patent and Trademark Officeに登録されている。


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更新履歴

November 27, 2001: 初版公開

この和訳は橋本喜代太(hash@reasoning.org)が行った。 和訳公開は原文をCERTのウェブで発見してから約1時間半後であるが、 CERTのウェブで公開されてから約7時間後と推測される。


本和訳の改訂履歴
2001年11月28日正午 (JST) 初版公開


訳者並びに連絡先: 橋本喜代太